アフリカ横断は可能か
アフリカ横断ー。
アフリカの旅程を模索している時、ふと頭にうかんだこのルート。
はたして可能なのか。
アフリカを長期で旅行する際まず筆頭にあげられるのは、アフリカ東部縦断ルートだ。
エジプトからアフリカに入り、スーダン・エチオピア・ケニア…と南下し、南アフリカの喜望峰を終点とするルートが一般的。
理由はいくつかあって、観光資源が豊富である・旅行者が多いため情報が簡単に手に入り、シェアメイトも見つけやすい・近年の中国の資本投資で道路や交通機関の整備が進み、移動が格段に楽になった・アフリカの中では比較的治安の安定した国が多いことなどが挙げられる。
ちなみに逆の北上ルートを取る人はあまりいない。これはたぶん南アフリカからアフリカ大陸に入るというケースが少ないからだろう。
アフリカ西部縦断ルートもあるが、このルートを選択する旅行者はごく少数。東部縦断と比べると1:8~1:9くらいで、モロッコ~南アフリカを完全に縦断する・した人はもっと少ないだろう。
まず見どころが少ない。道路・交通機関の開発が十分に進んでいないところがあり、移動がキツい。ビザ取りに追われる、かつビザ取得の難しい国が多い(ガーナ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、アンゴラなど)。そして治安・経済状況に難ありの国が多い。
こちらも北上ルートよりも南下ルートの方が一般的。北の玄関口モロッコがヨーロッパに近接していること、そしてビザ取り(特にアンゴラのビザ取得)が南下ルートの方が比較的容易であることがその理由だ。
と、ここまでわかった上でふと頭に浮かんだ疑問。
なぜアフリカ横断ルートは無いのか。
もちろんやった人はいるにはいるが、東部縦断はもちろん、西部縦断旅行者と比べてもとんでもなく少数であることは間違いなく、横断ルートが確立されているとは言えない。
そもそもアフリカ大陸が南北に長いことで、横よりも縦に目を奪われがちだが、いま一度地図を見てもらいたい。
東のエチオピアから西のセネガルまでは、ヨーロッパ横断と同じかそれ以上の距離があるのだ。
アフリカ横断を困難にする最大の理由は、アフリカ中部に位置する国々の治安が総じて悪いことにある。
まず北部リビア。2011年のアラブの春とカダフィ政権崩壊以降、治安は悪化。外務省の海外安全情報では最高のレベル4指定。最近観光ビザを申請したという旅行者に会ったが、リプライが来ないと言っていたので、ビザ取得すら難しいだろう。
それから南スーダンおよび中央アフリカ共和国。こちらも両国そろってレベル4の退避勧告が発令されている。ビザ取得は割と容易で、首都のバンギやジュバにちらっと寄った旅行者はいたが、横断には相当の覚悟がいる。
そしてコンゴ民主共和国(DRC)。治安はそれほど悪くないが、先ほども触れたようにビザ取得が難しい。横断するとなると少し遠回りになるのもネック。
さてそんな中目をつけたのはチャド共和国。スーダンの西に位置する国だ。
スーダンからチャドに入り、カメルーンに抜ける。情勢としてはスーダン西部のダルフールが気になるところだが、現状では最も可能性が高そうなルート。
「このルートならいける」
そう思った途端、もうこのルートしか考えられなくなっていた。
ルートに惚れたといってもいい。
もう行くしかない。
というわけでエジプトからエチオピアに飛び、ひと通り観光してスーダンに北上。
だがここで非常に残念なニュースが。
スーダン-チャド国境近くの町Geneinaで、国連の職員3名が誘拐されたとのアルジャジーラ報道。
2003年にスーダン西部ダルフール州で勃発したダルフール紛争は、政府の介入もあり今世紀最大の人道危機といわれた時期もあったが、ここ最近は事態は沈静化していた。それもあってスーダンからチャドへの陸路越えを計画していたのだが、これでは安全に渡航できる保証はない。
また、この出来事と並行してチャドビザの申請準備も進めていたのだが、チャドビザの申請に必要な日本大使館のサポーティング・レターが下りなかった。
チャドは外務省の海外安全情報でレベル3に指定されているので、大使館としては観光目的の個人にレターを発行するわけにはいかないらしい。
ついでにGeneinaに関しては、現地の職員さえも事件の発生に驚いているとのこと。
物事には必ず流れがある。風向きがある。状況が追い風でないことは明らかだった。
だが諦めるのはまだはやい。
東から西への横断が無理なら、西から東へ攻めてやろうじゃないか。
向かい風の逆は、追い風になるはずだ。
スーダンからの西進が難しいとわかった翌日に、スーダン発モロッコ行きの航空券を買った。
そして昨日、モロッコに到着。
情勢と時間の許す限り、東への横断を目指す。
この旅の終着点はどこになるだろう。
それは自分にもわからない。
わからないから、わくわくする。